「気付いたらYouTube見てて一日終わっていた」「締切前日になると急に本気を出す」 そんな自分の行動に、ため息をついている人も多いだろう。
正式に診断は受けていないけれど、「どう考えても自分ADHDっぽくないか?」と感じている——いわゆる自称ADHDの人たち。 僕自身も、体力を極力使いたくない30代の男として、かなりそちら側の人間だと思っている。
この記事では、「自称ADHDのあるある行動」と、その裏側にある行動原理をできるだけわかりやすく言語化していこうと思う。 単に「わかる〜」で終わらせず、「なぜそうなるのか?」まで理解できれば、生きづらさは少し軽くなるだろうか。
※医学的な診断や治療の話ではなく、「生きづらさを抱える人の行動を、日常レベルで理解する」ことを目的としている。
▼ 自称ADHDに共通する「あるある」5つのパターン
まずは、自称ADHDの人がよく口にする「あるある」をざっくり並べてみたい。 あなたはいくつ当てはまるだろうか?
- やる気が出るまで動けないのに、突然スイッチが入る
- どうでもいいことに限って異常な集中力を発揮する
- 予定や約束をすっぽかして自己嫌悪になる
- 片付けても片付けても、部屋がすぐカオスに戻る
- 「今やればいいのに」をわかっていながら先延ばしする
これらは性格の問題というより、「脳のクセ」や「行動のアルゴリズム」に近いものだろう。 では、一つひとつの裏側を、行動原理ベースで見ていきたい。
▼ 「やる気が出ないと動けない」行動原理
◆ 「やる気」がスイッチと思ってしまう
自称ADHDの人は、「やる気が出たらやる」「やる気が出ないから今日は無理」と考えがちだろう。 しかし、ここで重要なのは、やる気は原因ではなく結果という点だ。
行動原理としては、次のような流れになっていることが多い。
- 脳が「めんどくさい」と判断 ➝ 行動にブレーキ
- 先延ばししているうちにタスクが重く感じる
- 締切や危機が近づく ➝ アドレナリンが出てやっと動ける
つまり、「危機感」という強い刺激が入るまで、脳が本気モードにならないのだろう。 だからこそ、「やる気を出す」よりも先にハードルを下げる工夫が必要になる。
◆ 1アクションだけやると動き出せるのはなぜだろうか?
「机に向かうだけ」「PCを開くだけ」「タイトルだけ打ち込む」 こんな“小さすぎる一歩”を踏み出すと、意外と続けられたりする。
これは、脳が「行動を始めた自分」を整合させようとするからだろう。 一度動き始めると、「せっかくここまで来たし…」という心理が働き、追加の行動を取りやすくなる。
やる気が出なくて動けないのではなく、動いていないからやる気が出ない。 この視点を持てるかどうかが、生きづらさを減らす大きな分かれ目になるだろう。
▼「どうでもいいことに超集中する」行動原理
◆ 自称ADHDの「過集中」はなぜ起こるのか
・締切のある仕事は手につかないのに、ゲームには10時間ぶっ続けでハマる ・勉強は続かないのに、推し活や趣味だけは異常な集中力—— こうした過集中も、自称ADHDあるあるの代表だろう。
この行動原理の背景には、「報酬システム」の特性があると考えられる。 簡単に言えば、脳が「今すぐ快感を得られるもの」を最優先してしまうのだ。
- ゲーム:すぐに達成感・刺激・ご褒美
- SNS:いいね・コメントという即時報酬
- 推し活:感情が一気に動く
- 仕事・勉強:成果が出るのはずっと先
「脳にとって気持ちいい方へ引っ張られる」結果として、 必要なことより、“今楽しいこと”に過集中してしまうのだろう。
◆ 過集中を「悪者」にしないほうがいい理由
過集中に入ってしまうと、周りが見えなくなる。 だからこそ、「またやってしまった…」と自己嫌悪に陥りやすい。
しかし、本来この過集中は扱い方次第で「強み」になりうる特性だ。 自分の興味と仕事や生活の一部がうまく重なれば、他の人には真似できない集中力を発揮できるだろう。
大切なのは、「過集中そのものを潰そう」とするのではなく、
- 過集中しやすい対象を少しずつ「有益なもの」に寄せていく
- 過集中モードに入る前にタイマーや休憩の仕組みをセットしておく
といった前提の整え方だろう。
▼ 「予定・約束をすっぽかしてしまう」行動原理
◆ 忘れたくて忘れているわけではない
・友達との約束を間違える ・仕事のミーティングをカレンダーに入れ忘れる ・大事な連絡を後回しにして存在ごと忘れる
こうした「すっぽかし」も、自称ADHDにはありがちなパターンだろう。 当然、相手にも迷惑がかかるし、自分への自己評価も下がっていく。
ここで誤解しがちなのが、「自分はだらしない人間だ」という自己認識だ。 しかし、行動原理としては、脳の「ワーキングメモリ」が常に飽和している状態に近い。
・目の前の刺激にすぐ注意が移る ・次から次へと新しい情報が入ってくる ・「あとでやろう」が積み重なって頭の中が渋滞
その結果、重要度に関わらず、情報そのものが頭からこぼれ落ちる。 決して意図して忘れているわけではないだろう。
◆ 「覚えておく」をやめて「外部脳」に丸投げする
このタイプのミスに対して、「ちゃんとメモしよう」「意識して覚えよう」と頑張っても、たいてい続かない。 なぜなら、「頑張る」こと自体がワーキングメモリを消費するからだ。
そこで有効なのが、外部脳の発想だろう。
- 予定はすべてカレンダーアプリに即入力
- 「あとで返信」はスターやフラグを立てる
- やることはすべてタスクアプリに1行で入れる
- 紙のメモは1箇所にしか置かない
「覚えておく」から完全に手を引き、「ツールが全部覚えておいてくれる状態」を作る。 それだけで、すっぽかしリスクは大きく減るだろう。
▼ 「部屋がカオス、片付けが終わらない」行動原理
◆ 自称ADHDと「視界に入るもの全部が情報」問題
自称ADHDの人の部屋は、物理的な散らかり以上に情報の密度が高くなりがちだろう。
- 机の上に読みかけの本、書類、ガジェット、飲み物が散乱
- 床に服や袋が放置される
- 「とりあえず置き」が積み上がる
視界に入るものが多いほど、脳はそれぞれに対して「処理待ちタスク」として認識してしまう。 その結果、部屋にいるだけで常に消耗し続けるという状態になってしまうのだろう。
◆ 「分類」ではなく「選別」を先にするべき理由
片付けが苦手な人ほど、最初から「どこに何を収納しよう」と考えがちだ。 しかし、自称ADHDの脳にとって、これは負荷が高すぎる。
行動原理としては、次の順番のほうがスムーズだろう。
- まず「要る/要らない」の二択だけで判断する
- 要らないものを容赦なく捨てる(保留ボックスは小さく)
- 残った量に合わせて収納を決める
つまり、「収納を考える前に、物の総量を減らす」が正解なのだ。 これだけでも、片付けのハードルはかなり下がるだろう。
▼「今やればいいのに、先延ばししてしまう」行動原理
◆ なぜ「今」より「ギリギリ」を選んでしまうのだろうか?
自称ADHDの人にとって、先延ばしは日常茶飯事だろう。
- 支払いがギリギリ
- 締切前日に徹夜
- 健康診断の予約を後回し
このとき脳内で起こっているのは、おおよそ次のようなプロセスだと思われる。
- 「めんどくさい」「今じゃなくてもいい」という感情
- 不快感から逃げるために、別の楽な行動に切り替える
- 一時的にストレスが下がるので、先延ばしが「学習」される
- 結果として、ギリギリにならないと動けない習慣が強化される
つまり、先延ばしとは「短期的なストレス回避」がクセになった状態だろう。
◆ 先延ばし癖と付き合う現実的な方法
「先延ばしをやめよう」と本気で決意しても、3日後には元通りになる。 それなら、発想を変えたほうがいい。
- タスクを「5分でできる単位」まで分解する
- 「嫌な部分」だけ先に終わらせる
- タイマーを使って「15分だけ」やる
- 終わったら自分に小さなご褒美を用意する
人間は仕組みの生き物だ。 意志ではなく、動かざるを得ない環境を先に作ったほうが、結果的にラクに生きられるだろう。
▼ 自称ADHDの行動原理を一言でまとめると?
ここまでの「あるある」をまとめると、自称ADHDの行動原理はおおむね次の3つに集約されるだろう。
- 「今の快・不快」に極端に引っ張られる
- 「覚えておく」「管理しておく」が決定的に苦手
- 興味が一致したときだけ、異常なパワーを出せる
つまり、 「ダメな自分」ではなく、「クセが極端な脳」を持っているだけとも言えるのではないだろうか。
ならば、必要なのは「自分を責めること」でも、「根性を叩き直すこと」でもない。 このクセ前提で生きるルールを自分なりに設計することだろう。
▼ 自称ADHDが今日からできる「行動原理に沿った」小さな一歩
最後に、この記事を読んだあと、今日からできそうなことをいくつか挙げておきたい。
- 予定や思いつきは、全部スマホに即メモする
- やることは「5分でできる単位」まで分解して1つだけやる
- 机や部屋の視界に入るものを減らす(1日1つ捨てるでもいい)
- 過集中しやすいことを、少しだけ「勉強・仕事寄り」に寄せてみる
- 「また先延ばしした」と責める代わりに、「じゃあ次はどう仕組みを変える?」と考えてみる
自称ADHDの行動原理は、決して呪いではない。 扱い方を少しだけ変えれば、むしろ誰よりも面白く、生きやすくなる可能性だってあるだろう。
あなたは、自分の「あるある」を、今日から少しだけ優しい目で見られるだろうか。


コメント