新年度が始まり、ゴールデンウィーク（GW）が終わると、なぜか「仕事に行きたくない」「もう辞めたい」と感じる人が増えるようだ。特に最近、退職代行サービスの利用がGW明けに急増しているというニュースが話題になっている。5月病が原因の一つと言われるが、それだけではないはずだ。20代から40代の「生きづらい」と感じる男女にとって、この現象の背景にはどんな理由があるのだろうか？ また、こうした状況を防ぐための予防策はあるのだろうか？
退職代行サービスとは？GW明けに注目される理由
退職代行サービスとは、簡単に言えば、本人に代わって会社に退職の意思を伝え、手続きをサポートしてくれるサービスだ。料金は2～5万円程度で、LINEや電話で気軽に相談できる手軽さが特徴だ。2024年には、退職代行「モームリ」がGW明けの5月7日に1日で140件以上の依頼を受け、過去最高を記録したという。なぜ、GW明けにこんなにも利用者が増えるのだろうか？
まず、GWは多くの人にとってまとまった休暇の時期だ。普段忙しくて自分のキャリアや生活を振り返る時間がない人も、連休中に「このままでいいのか？」と考える機会が増える。特に新入社員や転職者にとっては、4月の新生活スタートから約1カ月が経ち、職場の現実が見えてくるタイミングだ。5月病によるメンタル不調も重なり、「辞めたい」という気持ちが一気に高まるのかもしれない。
5月病とは？GW明けのメンタル不調の正体
5月病は、新生活のストレスや環境変化が原因で、5月頃に心身の不調を感じる状態を指す。医学的な診断名ではないが、以下のような症状がよく挙げられる
- 倦怠感や疲れやすさ
- 仕事へのモチベーション低下
- 不安感や気分の落ち込み
- 睡眠障害や食欲不振
特に20～40代の若手社員は、職場での期待と現実のギャップに直面しやすい。新卒者は「こんな仕事をするつもりじゃなかった」、転職者は「前の職場の方が良かった」と感じ、ストレスが溜まるのだろう。厚生労働省の調査（2023年）によると、仕事で強いストレスを感じる労働者は82.2%に上り、メンタル不調で休職や退職するケースも13.3%と少なくない。GW明けは、こうした不調がピークに達する時期なのかもしれない。
5月病以外の退職代行急増の理由
5月病だけが退職代行の利用を後押ししているわけではない。以下、5月病以外の具体的な理由を掘り下げてみよう。
1. 上司からのハラスメントや退職の引き止め
退職代行「モームリ」の調査（2024年）によると、利用者の33.9%が「上司からのハラスメント」を退職理由に挙げ、30.2%が「退職を止められた」と回答している。パワハラやモラハラが日常的な職場では、直接「辞めます」と言うのが難しい。特に中小企業では、上司との距離が近く、退職を切り出しにくい雰囲気があるだろう。GW中に「もう耐えられない」と決意し、代行サービスに頼るケースが増えているのではないか。
2. 長時間労働やサービス残業
IT業界、特にSES（システム・エンジニアリング・サービス）企業では、退職代行の利用者が多い。モームリのデータでは、IT関連の利用者の7～8割がSES企業出身で、「長時間労働」や「サービス残業」が主な退職理由だという。GW明けは、4月の繁忙期を乗り越えた疲労が一気に噴出し、「もう働けない」と感じる人が増える時期なのかもしれない。
3. 職場の人間関係と相談相手の不在
新入社員や転職者は、職場で信頼できる相談相手がいない場合が多い。モームリの調査では、勤続1カ月未満の利用者が24.5%、1～6カ月の利用者が38.7%と、入社間もない時期の退職が目立つ。人間関係の構築に時間がかかる中、孤立感や疎外感が退職を後押しするのだろう。GW中に友人と過ごし、職場の悩みを吐露することで、「辞めてもいいかな」と決断する人もいるかもしれない。
4. 連休中の内省とキャリアの見直し
GWは、普段忙しい人にとって数少ない「自分と向き合う時間」だ。家族や友人と過ごす中で、「今の仕事に意味はあるのか？」「もっと自分に合った仕事があるのでは？」と考える人が増える。テレビやSNSで退職代行が話題になり、利用のハードルが下がっていることも大きい。マイナビの調査（2024年）では、退職代行を利用した理由の40.7%が「引き留められた（されそう）」で、32.4%が「自分で言い出せる環境でない」と回答。連休中の決断が、代行サービスへの依頼につながるのだろう。
5. 社会的な認知とサービスの普及
退職代行の認知度は急速に高まっている。2023年の調査では、20代の83%、全体の72%が退職代行を知っており、メディアやSNSでの露出が後押ししている。特に20～30代は、LINEで気軽に相談できる手軽さに惹かれる。GW明けに「仕事に行きたくない」と検索すると、退職代行の広告が目に入り、衝動的に依頼するケースも増えているのではないか。
退職代行を利用する20～40代の「生きづらさ」とは？
20～40代の男女が退職代行を選ぶ背景には、現代社会の「生きづらさ」が潜んでいる。以下のような悩みが、退職を後押ししているのではないか。
- 過剰な期待と自己責任のプレッシャー：成果主義や自己啓発文化の中で、「頑張ればなんとかなる」と信じがちだが、現実はそう甘くない。失敗や不調を自分のせいだと感じ、職場に居づらくなる。
- ワークライフバランスの欠如：長時間労働や休日出勤が常態化し、プライベートの時間が削られる。GWのような連休で「自由な生活」を味わうと、仕事に戻るのが辛くなる。
- SNSによる比較と焦り：同世代の「成功ストーリー」や「転職成功談」を見て、自分が置いてけぼりにされたと感じる。特に30代は、キャリアの岐路で焦りが強まる時期だ。
- メンタルヘルスへの理解不足：職場でメンタル不調を相談しづらい文化が根強い。弱音を吐くと「甘え」と見なされ、孤立する恐れがある。
こうした生きづらさが、GW明けの退職代行急増につながっているのだろう。では、どうすればこの状況を防げるのか？ 以下、具体的な予防策を考えてみたい。
GW明けの退職衝動を防ぐ5つの予防策
退職代行に頼る前に、まずは自分を守るための方法を試してみる価値がある。20～40代の生きづらい男女向けに、以下の予防策を提案したい。
1. 小さな目標を設定して達成感を得る
仕事へのモチベーションが下がる時、「大きな成果」を求めすぎると疲弊する。代わりに、「今日のタスクを1つ終わらせる」「同僚と軽く雑談する」といった小さな目標を設定してみるのはどうだろう？ 達成感が積み重なれば、仕事への抵抗感が減るかもしれない。心理学では、小さな成功体験が自己効力感を高めるとされている。
2. 信頼できる相談相手を見つける
職場の悩みを一人で抱え込むと、孤立感が増す。信頼できる同僚や先輩、社外の友人でもいいので、気軽に話せる相手を見つけてみるのはどうだろう？ 話すだけで気持ちが整理され、「辞めるしかない」という極端な考えを和らげられるかもしれない。社内に相談相手がいない場合は、外部のカウンセリングサービスも選択肢だ。
3. ワークライフバランスを意識する
GW明けに仕事が辛くなるのは、休暇中の「自由な時間」とのギャップが大きいからだ。普段から、仕事とプライベートの境界を明確にしてみるのはどうだろう？ 例えば、定時退社を心がける、週末に趣味の時間を確保する、といった小さな習慣が効果的だ。厚生労働省も、労働時間の短縮や有給取得を推奨している。
4. メンタルヘルスを優先する
ストレスが溜まったら、早めに休息を取ることが大事だ。睡眠時間を確保したり、軽い運動（散歩やヨガなど）を習慣化したりするのはどうだろう？ また、ストレスが長引く場合は、専門のカウンセラーや心療内科に相談するのも一つの手だ。メンタルヘルスを軽視せず、自分を大切にする意識が重要だろう。
5. 転職や副業を視野に入れる
今の職場が合わないと感じるなら、すぐに辞める前に、転職活動や副業を始めてみるのはどうだろう？ 例えば、週末にスキルを磨くオンライン講座を受講したり、フリーランスの仕事を少しずつ始めたりすることで、将来の選択肢が広がる。アントレの調査（2024年）では、趣味や好きなことを仕事にした人はストレスが減り、満足度が上がる傾向にあるという。
まとめ：GW明けの退職代行急増をどう考える？
GW明けに退職代行が急増する背景には、5月病だけでなく、ハラスメント、長時間労働、人間関係、キャリアへの不安など、さまざまな要因が絡んでいる。20～40代の「生きづらい」と感じる男女にとって、退職代行は「逃げ場」として魅力的に映るのかもしれない。しかし、衝動的に辞める前に、自分のメンタルやキャリアを冷静に見つめ直す時間も必要ではないだろうか？
予防策としては、小さな目標の設定、相談相手の確保、ワークライフバランスの意識、メンタルヘルスケア、転職や副業の検討が有効だ。一方で、企業側もハラスメント防止やフォロー体制の強化を通じて、退職代行を減らす努力が求められる。あなたは、GW明けの「辞めたい」衝動をどう乗り越えるだろうか？ まずは小さな一歩から始めて、自分らしい働き方を見つけてほしい。
よくある質問（FAQ）
Q1. 退職代行サービスは本当に安全なの？
A. 弁護士監修や労働組合運営のサービスを選べば、法的なトラブルは少ない。ただし、悪徳業者も存在するので、口コミや実績を確認することが重要だ。モームリやOITOMAなど、信頼性の高いサービスを選ぶのがおすすめだろう。
Q2. 5月病はどのくらいで治る？
A. 個人差はあるが、環境に慣れることで1～2カ月で改善する場合が多い。長引く場合は、専門家への相談を検討してみるのはどうだろう？
Q3. 退職代行を使った後に後悔しない？
A. マイナビの調査（2024年）では、74.2%が「また利用したい」と回答しているが、衝動的な退職で後悔するケースもある。事前に次のキャリアプランを考えると、後悔が少ないかもしれない。
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